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古賀恵介の部屋

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統合的外界像

認識進化の第2の段階は、複数の感覚器官から入ってきた情報を統合して、統一的な外界像を形成し、それを元に行動を決定するという段階である。感覚器官が外界の異なった種類の刺激(光・音・物質)に応じて分化すると、それに合わせて情報伝達経路(神経系)も分化していくことになる。そうすると、複数の系統の感覚入力からの情報をまとめ上げて一つの統合的な外界像を形成し、それをもとに行動を決定し、運動器官をそれに合わせて制御するという仕組みが必要となってくる。この統合的な外界像こそが認識と言われるものの初期形態であり、それをハード面で担うのは、言わずと知れたという情報処理専用器官である。

ここにおいて初めて、外界からの情報を総合的に分析し、それに基づいて行動する、つまり、認識で意志決定をして行動するという活動形態が出現する。この、意思決定の場としての認識のことを意識という。意識が成立するまでは、専ら定型反応に頼り、特定の刺激に対して予め遺伝的に決められた特定の行動をするという形でしか活動することができず、行動のあり方に柔軟性が見られなかったわけだが、意識的認識活動の登場により、外部の状況の変化に即応した形で柔軟に行動できるようになったのである。これは、動物の行動形態の進化上、画期的な新段階の登場であると言える。

しかし、前節でも述べたが、これで行動のあり方に定型反応的なものがなくなってしまうわけではない。生存・繁殖にとって必要な行動を、現在の感覚入力情報からすべて割り出さなければならないとしたら、とんでもない処理コストがかかってしまうであろうし、そもそもそういうことが可能であるかどうかも定かではない。それよりも、進化の過程で生存・繁殖を高確率で保証してくれた行動形態を遺伝的に内在化させておき、それが認識のあり方を特定方向に導くようにしておいた方がずっと効率的である。そしてまさにそういうものとして本能という生体機構が生まれたのである。

更新情報

2016年9月12日NEW
ページデザインを一新しました。
2013年7月1日
言語論下のページを改訂しました。
2009年11月23日
認識論下のページを改訂し、社会と文明共有認識を追加しました。
2009年11月12日
子育て認識の自由性を追加しました。
2009年11月9日
認識論を追加しました。