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古賀恵介の部屋

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想像力

統合的外界像に記憶と一般化能力が備われば、目の前の状況にそのパターンが当てはまるかどうかを吟味し、それにどのように対応すればどのような結果になるかを予測することができるようになる。いわば、頭の中で行動のシミュレーションができるようになるのである。推測能力の登場である。そして、これにより、行き当たりばったりの行動ではなく、生存・繁殖にとって有利に働く状況をある程度予測しながら行動するということができるようになるのである。

外界のあり方に関して推測を働かせシミュレーションするということは、外界像が多重化するということを意味する。最初は現状(今&ここ)のみでしかなかった外界像が、その時間的・空間的単一性を脱して、(最初は、未来のあり方の予測という形で)現状とは異なる外界像を描き出すことができるようになったということなのである。これは、言うまでもなく、想像力と呼ばれるものの原初形態である。

我々人間ほどではないにしても、高等哺乳類にこの能力がかなりのレベルで備わっていることは疑いようがない。でなければ、群れをなして、仲間と様々なコミュニケーションを行いながら行動したり、環境の大きな変化に対応して行動パターンを大きく変えたり(e.g. 人間に飼われて芸を仕込まれる)することなどできないはずだからである。ただ、人間と他の動物が大きく違うのは、動物の想像力の発動形態が、基本的に本能(生存・繁殖に必要な遺伝的行動パターン)に規定され、また個体経験により限界づけられているのに対して、人間の認識はそのような制約からほとんど解放されているということである。このことは一方で、高度の柔軟性を持ち、学問・芸術・宗教といった人間特有の文化活動を生み出す源泉になるのだが、他方で、認識が突拍子もない妄想や幻想に突っ走る可能性をも持つことになったということでもある。

更新情報

2016年9月12日NEW
ページデザインを一新しました。
2013年7月1日
言語論下のページを改訂しました。
2009年11月23日
認識論下のページを改訂し、社会と文明共有認識を追加しました。
2009年11月12日
子育て認識の自由性を追加しました。
2009年11月9日
認識論を追加しました。