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古賀恵介の部屋

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定型反応

認識進化の出発点は、特定の刺激に対して特定の反応を行なうという単純な定型反応である。定型反応は既に、ゾウリムシなどの単細胞生物にも見られる。学校の理科の時間に教わる「走性」と呼ばれる反応がその典型である。光・音・化学物質などを感知すると、それに向かって動いて行ったり、それから遠ざかったりする。なぜこのような反応が身についているかと言えば、その反応の仕方が生存に有利に働くという事態が高確率で起こり、その反応を遺伝的に内在化させた個体が生き残って個体数を拡大して行ったからである。このような定型反応が、本能と呼ばれる認識機構の原型をなしている。

定型反応はあくまで認識の出発点であり、認識の進化は、やがて定型的でない反応経路を生み出していくのだが、それで定型反応的な活動が体内から消えてなくなるわけではない。まずもって、定型反応は、体内調節に関わ生理的諸過程という形で生命維持にとって重要な役割を果たしている。この点は、人間を含めた高等動物に至っても変わるところはない。体内の生理的諸反応は、決まったリズムで恒常的に維持されることが必要不可欠であり、認識の偶然的あり方に左右されて始まったり止まったりするようでは、個体の生命維持に支障を来すことになりかねないからである。そのため、呼吸・循環・消化といった中心的な体内調節過程から、もっとミクロレベルの細胞反応に至るまで、我々の体内の様々なレベルで起こる反応の大半は定型反応のまま残されており、我々は、これを手足を動かすように直接には制御することができないのである。

さらに、行動のレベルでも、それぞれの種の動物の生存に必要な行動のうち、定型化できるものは、遺伝的に内在化された情報として受け継がれ、認識のあり方を背後から強力に駆動する力として働くようになる。本能と呼ばれる反応経路である。

更新情報

2016年9月12日NEW
ページデザインを一新しました。
2013年7月1日
言語論下のページを改訂しました。
2009年11月23日
認識論下のページを改訂し、社会と文明共有認識を追加しました。
2009年11月12日
子育て認識の自由性を追加しました。
2009年11月9日
認識論を追加しました。