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雑記 2008年6月30日

because は(書き言葉では)従属接続詞

英語には文や節どうしの接続にかかわる語が3種類ある。

  • 等位接続詞: and, or, but, for, so
  • 従属接続詞: when, if, though, because
  • 接続副詞: therefore, otherwise, however, accordingly

等位接続詞は、「等位」という名前からもわかるように、節と節を概念上同等のステータスで結びつける働きをする接続詞である。それに対して従属接続詞もその名の通り、主節に従属する節を導く接続詞である。主節と従属節は、いわば親分・子分の関係であり、従属節(子分)は、通常、主節(親分)と共に用いられなければならない。ただ、出現の順番は、主節の前に来ることもあれば、後ろの来ることもある。3つ目の接続副詞は、通常、先行する文に対する関係を表す副詞であり、これ自体に節と節をつなぐ文法的な機能はない。

英語の because は、この文章のタイトルにもあるように従属接続詞であり、書き言葉では必ず主節に伴われる形で用いられなければならない。ところが、学生に自由英作文をさせると、下の 1 ような、because 節が単独文として現れる例に頻繁に遭遇する。(正しくは、2 や 3 のような形でなければならない。)

  1. I did not study very much last term. ×Because I did too much part-time work.
  2. I did not study very much last term(,) because I did too much part-time work.
  3. Because I did too much part-time work, I did not study very much last term.

このような間違いが頻繁に起こるのには2つの原因が考えられる。

1つは、学生たちの頭の中に等位接続詞と従属接続詞の概念的区別があまりない、ということである。実際、うちの英語学科の学生に訊いても、こういう文法用語そのものを知らないという学生がかなり多い。学校で堅苦しい文法用語を教えるのは、当世のはやりではないので、まあ、無理もないかな、とも思ってしまう。とは言っても、彼らも、when や if や though の導く節を単独で使うことなどはまずない。というのも、これらの節が単文として現れることはない、ということを経験的によくわかっているからである。それに、これらの接続詞の意味を「~とき」「もし~ならば」「~ではあるが」という接続性の高い(日本語文法の用語で言えば「接続助詞」に近い)日本語表現の訳で憶えているだろうから、その面からみても、あまり間違えることはないのである。

もう1つの原因、これは because に特有であり、かなり深刻な問題である。中学校で because を最初に教わるときに、下のような対話文で教わるということなのである。

  1. A: Why didn't you come to school yesterday?
    B: Because I was sick in bed all day.

タイトルにも書いているように、because が従属接続詞でなければならないのは、あくまで書き言葉における制約であって、話し言葉では、こういう単独の使い方はごく普通である。しかも、because の訳を「~だから」「~なので」ではなく、「なぜならば」で憶えてしまう。そうすると、日本語文法で言う「接続詞」的な(つまり、英語で言えば接続副詞的な)感覚で because を 1 のように使ってしまうということになってしまうのである。

そのため、私は、英作文に限らずどの英語の授業でも、because が出てきたらこの点を詳しく説明することにしている。それでも、またしばらくすると忘れてしまうようだが・・・。

補 足

because が従属接続詞であるのに対して、同じく理由説明を表す for は等位接続詞である。(但し、基本的には文語である。)

  1. I did not study very much last term(,) because I did too much part-time work.
  2. I did not study very much last term, for I did too much part-time work.
  3. I did not study very much last term. For I did too much part-time work.

それゆえ、because と違って、c のように独立文の先頭に用いることもできる。しかし、because 節のように、帰結節の前に現れることはできない。

  1. Because I did too much part-time work, I did not study very much last term.
  2. ×For I did too much part-time work, I did not study very much last term.

これが、等位接続詞と従属接続詞の最大の違いである。

また、理由説明の関係を表す接続副詞句としては after all というのがある。これは、日本人学習者にはあまり知られておらず、辞書にもきちんと載っていないことが多いのだが、日常的な話し言葉ではよく用いられる表現である。

  1. "It's not surprising that Iran would have a very strong interest in Iraq," said Pillar. "After all, this is the country that under Saddam Hussein started a war back in 1980 that resulted in hundreds of thousands of Iranian deaths."
    (Iranian Revolution Still Resonates 28 Years After Shah's Fall, VOA News 2007/02/08)

f の after all は「結局」と訳してみても意味が通じない。「というのも~だからである」というような感じで理解しなければならないのである。

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